宮澤伊織 『裏世界ピクニック6 Tは寺生まれのT』 (ハヤカワ文庫JA)

「鳥子ってさあ、バカではないと思うけど……ときどき極端に知性が下がるときがある気がするんだよね」

「ええっ、いつ?」

「今だよ!!」

私、紙越空魚はどこにでもいる普通の大学生。ある日、大学へ急ぐ道のりで金髪の美人とヤクザみたいな男に拉致られて謎の施設に連れ去られてしまう。私、いったいどうなっちゃうの~!?

空魚や鳥子たちの前に「寺生まれのTさん」が実体を持って現れた。彼の行動はどうも空魚たちを裏世界から切り離そうとしているように思えるが、その真の目的は。空魚と鳥子のふたりは裏世界でDIY、空手後輩がレギュラーメンバー入り(?)を果たし、小桜さんがひたすらかわいそうな目に会うのを愛でる。コンセプトが「劇場版」ということで、珍しく一冊を一エピソードに費やしているシリーズ第六巻。キャラクターの掘り下げに力を入れつつ、裏世界の持つ新たな側面や可能性をほのめかす。さすがに綺麗にまとまっていて、尺関係なくすらすらと読める。毎度ながら楽しゅうございました。