賽目和七 『人形遣い』 (ガガガ文庫)

人形遣い (ガガガ文庫)

人形遣い (ガガガ文庫)

「人生とは、斯くも面白いものなのですね」
「たかが十数年で悟ったようなことを言うな、クソガキ。すぐに現実を見ることになる」
「だけどきっと、こんな幸せなことがあったのだということは、思い出として残りますよ。そして、これからもそうであればと、そう思います」

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人形を操る一族の少女,坂上神楽.坂上家から逃げ出した母から生まれ,母の死後に家に連れ戻された神楽は,今では人形繰りの最高峰「人形遣い」として坂上家の当主である伯父に酷使されていた.ある日,神楽は路地裏で人狼に襲われていた少女を助ける.
第7回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作.誰からも愛されず,幸せを知らず,才能を擦り潰されながらも「世界的天才美少女!」として気を張り続ける少女が,ある吸血鬼の少女との出会いから運命が変わってゆく.ガール・ミーツ・ガールストーリー.極端にシビアな人生を送ってきた小娘と,数百年を生きながらどこか用心の欠けた吸血鬼の娘を対比させながら,だんだん柔らかくなってゆく関係は,百合なんだけども必要以上にベタベタしている印象ではない.個人的にはこのくらいの塩梅がちょうどいい.吸血鬼鈴音が自分を指していう「完結した生き物は老成しない」という言葉になんかグッと来るものがあった.ひとはひととの関わりがあって成長するんやで…….大きな驚きは少ないかもしれないけれど,非常に完成しており,少なくとも読んでがっかりすることはないはず.良いものでした.