長谷敏司 『ストライクフォール4』 (ガガガ文庫)

「新しい時代を告げるシーズンが来た。人類が経験したことがない激動のときだ。昨日までのセオリーは、もう通用しない。すべてが変わるのだ。昨日まで自分が何者か知らなかったプレイヤーが、今日ヒーローになる。潮流に乗るということが、これほど重視される一年は、人類の歴史に、もうきっとこない」

激動とともに迎えられたストライクフォールの第24シーズン。太陽系全体に広まった慣性制御と、それが生み出した散兵(スカーミッシャー)戦術によって、宇宙戦闘ドクトリンは根底から覆されていた。雄星は、自らがもたらした慣性制御に振り回され、シルバーハンズの火星遠征においてチームのお荷物と化していた。

「スポーツは、戦争に勝てるよな?」

ロバートが、軽くため息を吐いた。

「そんなこと、僕に聞くな」

約4年ぶりとなる新刊。戦争の代わりとして生み出されたスポーツ、ストライクフォールが、その戦術を洗練させていくに連れて、純粋な戦闘技術に近づいていく。やっていることは、宇宙空間を一辺数千キロのフィールドに区切っての、15vs.15のロボットチーム戦。登場人物はかなり多いし、複雑なことをやっているのは間違いないのだけど、意外なほど読みやすい。戦術の変化に応じて作中でスタッツを作ったり、実在のスポーツを例示に出す場面が多いのがかなり効いているのだと思う。

新しい技術と戦術が編み出されて、競技そのものが本質さえ変わっていく。スポーツがたどってきた歴史を、ものすごいスピードと淘汰圧で見せつけられた。戦争とスポーツの違いという大きなテーマも、思わず「ガンダムやんけ!」と言ってしまったチームの新戦力も、華と熱量が感じられていちいち楽しい。待っただけの期待に答えてくれた、良い作品だったと思います。次はそれほど間が開かないといいな、と思いながらお待ちしております。