斜線堂有紀 『不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語』 (宝島社文庫)

今私は先輩の椅子に座り、先輩のように本を読んでいる。先輩になってから読む本は面白かった。先輩の世界から見る世界は新鮮だ。何より、翌年部室にやってきた後輩を見た時の愛しさといったら無かった。先輩はこんな風に私を見ていたのだな、と思う。

1話1ページ。ページを捲るたびに、「私」と「先輩」の世界は変わっていく。全124話で語れれる「私」と「先輩」の物語。ちょっとした小咄集と思って読みはじめて、実際に小咄集ではあるんだろうけど、読みすすめるうちになにやら不思議な感覚に陥る。先輩と後輩という、定まった関係が、発展したり、終わったり、リセットがかかったり。通底するものは感じるのだけど、言葉にしがたい不思議な読後感がある。なんだろう。ぜひ一気に読んで、この感覚を共有してほしい。