父がブレイズマンだと私が知ったのは、父が死ぬ直前のことだった。
――実は、私がブレイズマンなんだ。
父はいつもと変わらぬ温かな笑みを浮かべ、愛おしそうに私の頭を撫でると、少しだけ寂しそうな顔をしてから、サラサラとした灰になって消えてしまった。
それが父の最期だった。父は普通の人間ではなかったのだと、その時知った。
無敵のヒーロー、ブレイズマンが死んだ。日傘の魔女、アポトーシスも死んだ。残された《フォールド》たちの影によって、街の空気が少しずつ変化していく。一時の平和な日々を過ごしていた春樹の前に、見覚えのある日傘を差した少女が現れる。
これが命です、と男は後に語った。これが死神です、とも語った。
「お見事です、天道陽菜さん。その鎌は貴方にこそ相応しい」
床に転がった男の生首が、そう言った。
「日陰者たちの青春奇譚」第二巻。ブレイズマンの娘はヒーローの継承と復讐を誓い、日傘の魔女の娘もまた、復讐を誓い魔女の後継者となる。「カツアゲ仮面」こと春樹もまた、再び命を賭けた戦いの渦中へと飛び込んでゆく。例えるなら、バットマンとジョーカー亡き後のゴッサムシティを思わせる、ヒーローとヴィランと日陰者たちの物語。
ヒーロー/魔女の二代目は偉大だった父/母の後を継いで、期待に応えようとして、自ら重みを背負いボロボロになってゆく。主人公を含めた年長者たちの言動が、年長者らしいしっかりと落ち着いたものになっており、物語にしっかりとした重みと説得力を与えていたと思う。ヒーローものが好きなら手に取ってみて損はないはず。デビュー作だった一巻から、グっと面白くなっているのは請け負います。
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