波野彼方 『中野森高校文芸部のホームズ&ワトソン』 (星海社FICTIONS)

「誰でも書けるけど、誰でもプロになれるわけじゃない」

思わずそう反論し、気付く。

そうか、私はプロになりたかったんだ。いつか見た夢――あのとき妄想と切り捨てた職業作家としての生活風景は、今にして思えば、とても心地よかった。

ただし、それはもう永遠に叶うことはない。

ある日の放課後、中野森高校文芸部の部室を一人の女子生徒が訪れる。来訪者、曲直瀬彰は、ミステリを書く人間を探しているという。作家志望の文芸部員、藤堂基子は、名探偵を目指すと宣言する彰に助手として指名される。

ノート盗難の謎、数量限定ショートケーキの謎、学年一位の謎。本格ミステリのフェアネスを重んじるワトソンと、名探偵志望なのにホームズを知らなかったホームズのコンビが謎を解き明かしてゆく。ガールミーツガール・日常の謎・学園ミステリ。派手さはないけど、全方向に卒のない語りが印象に強く残る。根っこに「小説を書く理由」があって、物語を動かしているのがいいなあと思った。