二月公 『声優ラジオのウラオモテ #06 夕陽とやすみは大きくなりたい?』 (電撃文庫)

「ここで重要なのが、お客さんの目線。不思議なもので、お客さんは声優の後ろにいるキャラクターを見ながら、同時に、声優を観ている。キャラと声優を重ね、そのどちらにも強い感情を抱く。キャラクターだけではなく、声優だけでもなく、ふたりを重ねて観ている。だからこそ、熱は何倍にも膨れ上がる。わたしはそう思うの」

アニメ、ゲームにラジオとメディアミックス企画を前提としたアイドル声優プロジェクト「ティアラ☆スターズ」。オーディションに合格した夕陽とやすみは、ユニット同士の対決という形式のライブで、それぞれのユニットのリーダーに抜擢される。メンバーはよく知った先輩に、年上の新人声優や、芸歴八年の小学生声優といったくせのある面々。ライバルのふたりはライブを成功に導けるのか。

そんな邪な考えが頭をよぎっている間に、割と真面目なビンタを喰らった。

いやビンタて。

マジのやつじゃん。

「女性声優が女性声優にビンタしないでよ……、びっくりするなぁ……」

ライバルと仕事と成長と、ふたりの声優の青春を描いたストーリーの第六巻。上記引用部分やあらすじから、どっかで聴いたことある……と感じるひとは、おそらく自分と趣味が近い。橘ありすと市川雛菜って相性悪そうだな……というのが読みながら考えたこと。バチバチにお互いを意識したライバル関係は変わらず熱く、さらに広がりを見せようとする人間関係の温度がとても心地良い。声優という仕事と、高校卒業を前にした進路の選択と、物語としても地に足がついたものになりつつある、のかな。引き続き応援してます。