二月公 『声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない?』 (電撃文庫)

「そこが一番気に食わない。どうせあんたら、自分たちのことを可哀想な被害者だと思ってんでしょ? だから当事者意識が薄いの。自覚できてないの。いつまでふわふわしてんの? きちんと現状把握してないくせに。真面目に仕事やってるとか言うな」

裏営業疑惑は晴れたものの、夕陽とやすみに待っていたのは「アイドル声優としての死」だった。素を出してラジオを再開するも、キャラクターを作っていたことが知られたことにより、世間からのバッシングは止まない。更には、学校バレしたことにより通学路や家の付近に不穏な姿やシャッター音が聞こえるようになってしまう。

「アイドル声優としての死」を迎えた二人は、いかにして声優を続けるのか。もしくは諦めてしまうのか。声優を続けたい娘と、身バレしてしまったために、声優業に強固に反対する母親。キャラを作ってファンを騙していたことへの、ファンのバッシング。それでもそんなキャラが好きだというファンがいること。あらゆるものが恐ろしくこじれている。

不思議なカーブを描くリアリティラインを、鬼気迫る描写で有無を言わせずねじ伏せている。一巻を読んだときにはまったく想像していない方向性と情熱があり、とても良かった。ある意味ワンアンドオンリーな作品なんじゃないかと思う。題材が題材だけにあまり広くすすめる気はしないのだけど、ちょっとでも興味があるなら読んでみるといいと思います。



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