宮澤伊織 『裏世界ピクニック7 月の葬送』 (ハヤカワ文庫JA)

「空魚ちゃんの口の悪さは下品とかそういうんじゃないんだよ。ブラックジョークを口走って周りにドン引かれてるのに気付かずへらへらしてる、よくあるオタクの話し方ってだけ。ほら、ネットスラングとか面白いと思って実生活で真似しちゃう奴いるだろ。あれだあれ」

もはやヒトではなく、裏世界から現実に、予測不能の干渉をする存在となった閏間冴月。このままでは安息はない。空魚は閏間冴月を「殺す」ことを決意する。

因縁の相手の「葬送」を、一冊をかけて描いた第七巻。「葬儀」というものを、社会における「儀式」の意義や、人間関係から生まれる「空気」から定義して、実行する。言葉に並べるとかんたんだけど、ロジカルで非常にわかりやすく、それだけでエンターテインメントになっているのはさすが。実話怪談を利用して現実に干渉してくる敵を、実話怪談でハックするという、ある意味定番のシチュエーションもむちゃくちゃ怖くて楽しい。様々な人間関係を経験した空魚が、だんだんと社会性を身に着けていることもまた楽しい。積み重ねたものの重さが感じられる、良い決着の物語だったと思います。