しめさば 『君は僕の後悔(リグレット)3』 (ダッシュエックス文庫)

やめてくれ。

身体が震えた。

彼の……いや、“彼ら”のまっすぐさは、そういうふうに生きられない人間にとっては、暴力的だ。正当性をかなぐり捨てて、自分は間違っているのかもしれないと思いながらも、まっすぐ進んでくる人間を、言葉で糾弾しても、意味がない。無敵の存在だ。

拒絶しても、向かってくるのなら……逃げることしか、できないじゃないか。

夏休みがやってきた。結弦は藍衣や薫たちと高校生らしい夏を満喫していた。そんな中、壮亮の提案で文化祭に向けてバンドを組むことになった。触れたこともないドラムに苦戦しながらも基礎からなんとかものにしていく結弦。その一方、壮亮には思うところがあるようだった。

音楽と言葉と心、その間に共通するもの。恋と対話の物語、第三巻。なんというか、人間関係の距離感の描き方が絶妙で、これぞ「対話」の物語だと感じた。会話での身の引き方・踏み込み方だったり、言葉の交わし方・躱し方がとても自然で、キャラクターたちの存在感が非常に強い。派手な事件が起こらずとも、強く印象に残る、重い物語になっていた。