その一部始終を見ていたのは、次元の穴の向こうからこちらを覗く、大きな大きな瞳だった。
其は〈獣の夢〉。《頭蓋の獣》。人工頭脳〈礼佳弐号〉の化身――あるいは、瑠岬センリ。
夢の世界の、絶対強者。
【――人工頭脳〈礼佳弐号〉から〈千華〉へ、大規模な演算介入発生!】
〈銀鈴事件〉から一ヶ月。呀苑メイアを加えた〈夢幻S.W.〉のメンバーは〈貘〉として再始動しようとしていた。謎の犯罪組織〈アトリエ・サンドマン〉による、総合夢信企業〈ゼネラル・ドリームテック
人工頭脳の発明によって生まれた夢信空間。現実世界と同じレベルで並立するもうひとつの世界が社会に何をもたらしたのか。夢と現実、ふたつの世界で繰り広げられるサイバーパンクアクション。設定が複雑かつ一巻からだいぶ間が空いてしまったのでほとんど忘れていたけど、冒頭の用語集や文中の説明はしっかりしており、フォローはびっくりするほど手厚い。
「あぁ気にしなくていいわよォ? さっきからアタシが説明口調になってんのは、患者の意識をこの空間に馴染ませるための催眠術みたいなもんだからァ。別にアタシの喋ってる内容を理解する必要はないわァ。お経か子守唄とても思って聞いてりゃいいのよォ」
夢信空間の存在がもたらした悲劇、その本当の原因は? 新しいキャラクターもそれぞれ印象的に描かれており、悲しい行き違いと解決が説得力のあるものになっていた。まっとうなジュブナイルであり、アクション小説としても楽しい。エンターテイメントとして完成されたものになっていると思います。