おそるおそる、首にあてた手を離して、見てみれば……手のひらに、少量だけど、血が……
「うそ、だ……」
首から、血が出ている? なんで血なんかが出る?
見れば、凛が口元を腕で覆っていて……あぁ。つまり、凛に、噛みつかれて……
7月も半ば。宵ヶ峰京子がアイドルを辞めて地元佐賀に帰って一ヶ月、すなわち従弟の衛と恋人になって一ヶ月。中学生レベルの恋愛観しかない京子の復讐計画はまったく進展していなかった。そんな折、同じアイドルユニットに所属していた京子のいちばんの親友、喜多河桂花が佐賀に遊びに来ることになる。
衛くんを取り巻く状況は、いったん整理されたかのようでいてますます混沌の度を増していた。元人気アイドルなのに内面はポンコツな現恋人の従姉。何を考えているのかまったく語ろうとしない姉。一人称の語りもあるのに言ってることがさっぱりわからない幼なじみ。そして、東京から佐賀へ思惑を抱えて遊びに来た落ち目の現役アイドル。
女と男、女同士の感情のぶつけ合いに、口だけではなく、当たり前のように手も出るし、それどころか歯まで出る。……怖い! 同性の親友だけが癒し。様々な感情が交差する物語ではあるけど、テキストは非常に整理されていて読みやすい。それだけに、何を考えているのかわからない人間が複数いるのが怖い……。看板に偽りなし。最高でした。ぜひ一巻からまとめてどうぞ。
kanadai.hatenablog.jp