「止めてくれ。俺はもう、福祉に泣く者を作りたくないんだ」
区役所福祉生活課、生活保護受給申請窓口で働く非正規公務員、丸山千尋。福祉の理想に燃え、正規公務員と生活保護受給者の間に立って働く千尋のもとに、いくつもの部署をたらい回しにされてきた問題職員、中田忍が配属される。
『公務員、中田忍の悪徳』の8年前の出会いと、五巻と六巻の間の出来事をつなぐ。「超公式的非公式同人誌」を名乗るスピンオフ同人誌。福祉という泥沼の理想と現実の間で壊された人生。「ヒト」の下僕たる「公務員」の生き方。愛はなく、幸せもわからなくなった男、中田忍。あとがきで「商業作品から削ぎ落とされた、不要なリアティの残りカス」といい、「本同人誌の内容を置き去りに、『公務員、中田忍の悪徳』は完結させます」と断言するだけあって、めちゃくちゃに重い。フィクションとスピンオフ、二重の皮を被ったなにかだった。ガガガ文庫で出すことは無理だったかもしれないけど、出してくれて良かったし、読めて良かった。
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