中西鼎 『さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々』 (ガガガ文庫)

そうだ、燃えてしまえ。ぼくらに優しくしなかった全ての世界よ、大人たちよ、町並みよ、悲しみよ、苦しみよ、憂いよ、淀みよ、混沌よ、無秩序よ、無価値なものよ、無益なものよ、くそったれな全ての物事よ、この国よ、この世界よ、ぼくときみ以外の全てのものよ、あらゆるものが灰に還ればいいと思った。例外なく土へと戻ってしまえばいいと思った。そしてぼくらが安心して、深く息を吸える場所が出来ればいいと思った。

三年前、姉を死に追いやった七人の人間を皆殺しにしてやりたい。四方を山に囲まれた田舎町、阿賀田町。東京からやってきた少女、佐藤冥は、地元の少年、中川栞に協力を持ちかける。

陰湿で閉鎖的な田舎町。姉を死に追いやった七人を、古くから祀られる蛇神の力を借りて順番に殺害してゆく。慣れとともに速度を増してゆく殺人描写。オカカシサマのルールの裏をかき、それを正面から完全にぶっちぎるカタルシス。恋人として送るわずかで濃厚な最後の日々。復讐劇であり、伝奇小説であり、青春小説でもある。

ある人物の「クソッタレの世界」への憎悪と、「壊れた」人間の描写にはくるものがあった。ひとりの人間を完全に壊すだけの、東京への憎悪、田舎町からどこにも行けない境遇への怒りと憎しみ。作中では殺されるべき「悪」の人間の理屈だったので、読んでいる最中には気づけなかったのだけど、読み終わってから考えてしまった。地獄のような一冊だったと思います。