白金透 『姫騎士様のヒモ5』 (電撃文庫)

「同情とかじゃなくって、その、うまく言えないけど、分かった気がする」

「何が?」

「冒険者の人たちってね、笑ったり泣いたりするけど、すごく怖い目をしているの。どんなにお酒飲んでも酔っ払えないって感じで」

スタンピードを乗り越え、復興に向かう『灰色の隣人(グレイ・ネイバー)』だが、その途上で貧富の差は広がり、治安は目に見えて悪化していった。そんなある日、スタンピードの責任を取るという形でギルドマスターがとつぜん逮捕される。ギルドマスターが蓄えていたという隠し財産の在り処をめぐり、彼の孫娘エイプリルにまで懸賞金が掛けられてしまう。

剛腕で冒険者ギルドを取り仕切っていたギルドマスターが逮捕された。複数の勢力が小競り合いを続け、治安が最悪に陥った迷宮都市で、金貨百万枚と噂される隠し財産をめぐるバカ騒ぎ(ホースプレイ)が起こる。迷宮都市『灰色の隣人(グレイ・ネイバー)』がいかに危ういバランスで成り立っていたか。たとえ仮初だとしても、それを成り立たせるのにどれだけの犠牲が必要だったのか。かなり冷静、というか冷徹な形で描いていたと思う。「超人畜無害」な少女エイプリルをフィルターに噛ませたおかげで、より一層際立ったものになっていた。第二部開始にふさわしい開幕だったと思います。