鶴城東 『衛くんと愛が重たい少女たち』 (ガガガ文庫)

なんならぼくが誰かに好意を向けることを、気持ち悪いとまで言ってくる。はっきり確認を取ったわけじゃないけど、凛は、ぼくから「性欲」の匂いがするのがとにかく嫌なんだろう。

そんな凛にとって、ぼくの失恋は、溜飲が下がるほどに「面白い」話だった。

佐賀の田舎町に住む少年、森崎衛は女難の相に見舞われていた。姉にはいいようにおもちゃにされ、片想い中の幼なじみはこっちの気持ちを知ってか知らずか男をとっかえひっかえ。そんなある日のこと、東京でアイドルをしていた従姉の京子が芸能界を引退して帰ってくるという。ナーバスになっていた衛は成り行きで京子と男女のお付き合いをすることになる。

……え、待って。

理屈が異次元すぎて……なにこれ?

怖。

衛くんの周りには一癖も二癖もある少女たちばかり。三角四角関係ラブコメ……というには重く、良い意味でタイトルに偽りがない。「(泣)」じゃあないんだよ帯よ。ちょっとした描写(吐き捨てられた「死ねよ」への反応とか、内斜視とか、見て見ぬふりをする家族とか)の粘度がいやに高く、読み終わってしばらくどんよりした気持ちになった。最年長なのに大人げない京子の暴走が唯一の癒やし。というか、主要人物なのに何を考えているのかまったく説明のない姉がいちばん怖かった。どんよりしたラブコメのようなものを読みたいひとはぜひ。良かったです。