矢野アロウ 『ホライズン・ゲート 事象の狩人』 (早川書房)

「想像だって現実だよ。だって、人間が考えるときはきっと、脳の中にある粒子が、現実に位置を変えたり動いたりして思考をかたどってるはずだよね。そして、実際に粒子が動く以上、世界は必ず変化する。世界と頭の中は、時空的にひと続きなんだから」

十五兆標準太陽質量の超巨大ブラックホール〈ダーク・エイジ〉。これが人工物であるらしいことを突き止めた宇宙連邦は、地平面探査基地〈ホライズン・スケープ〉を建設し、特異点の研究を続けていた。〈ホライズン・スケープ〉に招かれたヒルギス人の狙撃手、シンイーは、パメラ人の少年、イオとともに別の宇宙に続く〈(ゲート)〉を探していた。

第11回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。超重力によって周囲の時間と空間に取り残されていくふたりは、ブラックホール表面の歪みに銃を向けていた。超巨大な人工ブラックホールに隠された〈門〉、それぞれに変異した脳を持つふたりの出逢い、ふたりを引き離す時空の歪み。自分をスカウトした人間はとっくに去り、出会った時には同い年だったパートナーとの間には、いつしか母と息子のような年齢差が生まれていた。誤解を恐れずに言うなら『夏への扉』の遠未来版かつハードSF版という印象を受けた。いかにもなガジェットを駆使したハードSFとボーイ・ミーツ・ガールの相性が良いのは皆さんご存知の通り。読みやすさはさほどではないと思うけど、あらすじが気になったならどうぞ。