優汰 『この恋、おくちにあいますか? ~優等生の白姫さんは問題児の俺と毎日キスしてる~』 (スニーカー文庫)

俺の中で、一気に白姫という人間の解像度が上がった。ふと漏らすような態度からなんとか掠め取って察するしかできなかった白姫の本当の顔が、今、本人の言葉で鮮明に映り始める。

知れば、こんなに違うんだ。

学校一の問題児と知られる君波透衣には、父親が所有するビストロを継ぐという夢があった。夢のためなら誰にどう思われようとも構わない。そう考えていた透衣の前にある日突然、父親が強引に組んだ婚約者を連れてくる。その婚約者は、学校一の美少女で優等生の白姫リラだった。

夢を抱いた自由な問題児と、唐突に許嫁だと知らされた完璧な優等生の、キスでつながる秘密の関係。第19回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞のラブコメ。わりと粗い、というか長所と短所のかなりはっきりした小説だと思う。魅力的なキャラクターの成長と変化、少し粗いリアリティラインに、一段落はすれど完結しないストーリー。個人的に気になるところはかなり多かったんだけど、書きたいことを書いた、甘くてまぶしい青春小説だったのは間違いない。ひとまず続きを楽しみに待たせていただきます。