鵜飼有志 『死亡遊戯で飯を食う。6』 (MF文庫J)

ふらふら生きていて、なんとなくプレイヤーになった。

それが、幽鬼(ユウキ)の過去を説明するすべてだ。

なんの背景もない。なんのドラマもない。当時の幽鬼(ユウキ)の人格で、そんなものは生じようがなかった。

幽鬼(ユウキ)の前に突如として現れたもうひとりの幽鬼(ユウキ)。それは、常人離れした幽鬼(ユウキ)の感覚が作り出した幻影だった。幻影の幽鬼(ユウキ)は、ややこしい感情なくゲームに参加していた、鈍感だった頃に戻れと幽鬼(ユウキ)に言う。幻影を消すには〈ルール〉に従った〈ゲーム〉しかないと考えた幽鬼(ユウキ)は、模擬ゲームで幻影と対決する。

幽鬼(ユウキ)が初めて参加したゲームの記憶。それから60回を超えるデスゲームからの生還を経て、幽鬼(ユウキ)はどう変わったのか。その末に現れた己の幻影との戦いを描くシリーズ第六巻。極まった格闘漫画がたどり着くような、行き着くところまで行き着いたスピリチュアル混じりの狂気。それをデスゲームとミステリの枠組みでロジカルにコントロールする作者の手練手管が見事だった。60回のゲームを経ての様々な変化を、一から十まで描かずとも隙間からイメージできるような描写も良い。前巻に引き続き間違いなく傑作でした。