鵜飼有志 『死亡遊戯で飯を食う。5』 (MF文庫J)

自分の腕が見える。剣が見える。対戦相手が見える。しかし、その距離を、正確に把握することができていなかった。

なぜなら、すでに片方の視力がなくなっているからだ。

四十五回目のゲーム、〈ハロウィンナイト〉を生き残った幽鬼(ユウキ)は、そこで出会った参加者、玉藻(タマモ)と再会する。玉藻(タマモ)幽鬼(ユウキ)のアパートに押し掛けてきて強引に弟子になる。そんなドタバタのなか、右目の視力を喪いつつあった幽鬼(ユウキ)は、全盲のプレイヤー、鈴々(リンリン)を訪ねる。

ゲームの経験を重ねた。初めて弟子を取り師匠になった。指を失い、片目の視力を失いつつあった。変化を続ける時間と環境のなか、幽鬼(ユウキ)の六十二回目のゲームを描く。静かなバイオレンス小説でノワールで、今回はタイトルの元ネタであろうカンフー映画のにおいもした。師匠と弟子の関係が中心にあることは間違いないのだけど、師匠から弟子への継承みたいな話とはちょっと違うのかもしれない。デスゲームであるからには、誰が相手であろうと常に紙一重の命のやり取りがある。そんな緊張感を書き続けているのは本当にすごいことだと思うのです。