「母親とも呼びたくねぇ、こんな奴」――吐き捨てるような言葉とともに、棺は炎に包まれた。
春も近い3月の京都。撫子とアマナは、撫子の従姉妹を名乗る少女、獄門杓奈に襲われる。獄門家当主の座を狙う杓奈は、パートナーの菊理塚みまかとともに本気で撫子を殺そうとしていた。ふたりの因縁と決着は、春の彼岸、大江山大鬼斎で付けられる。
「別段おかしいことでもないでしょう。お父さんだった人も、お兄さんだった人も、お姉さんだった人も――全員、お母様や私よりずっとずっと弱かったんですもの」
「……家族、だったんでしょう?」
「弱いやつなら家族でも淘汰される――それが獄門家です。弱いのは、喰われるだけ」
「……正気で言っているの?」
酒呑童子を慰撫する宴、大江山大鬼斎。現代の鬼の末裔が全国から集まるこの場で、ある儀式が執り行われようとしていた。血と愛憎に塗れた獄門家に生まれ、花の名前を冠したふたりの少女はここで殺し合う。二巻もそうだけど、その時点で書けることを出し惜しみすることなく、全部披露している印象がある。密度があってゴージャス、でも詰め込みすぎてちょっと読みにくいところもある、という。どう足掻いても幸福になれると思えない「鬼」の宿命はどう転がるのか。見守っていきたい所存です。
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