堀晃 『エネルギー救出作戦』 (新潮文庫)

エネルギー救出作戦 (新潮文庫)

エネルギー救出作戦 (新潮文庫)

コンピュータ,エネルギー,宇宙と馴染み深い三部のテーマで構成されている SF ショートショート全 29 編.星新一と比べるといくぶんかハード SF 寄り,そしてかなりウェットな感じ.以下,印象深かったものを選んで感想.
未来社会をシニカルに描いた「ハロー! ハロー!」.冷笑的でユーモラスで切れ味鋭い,これぞショートショートの醍醐味.「森からの声」.花粉症持ちとして長年苦しんできたアレにそんな意味があったなんて……! 「エネルギー盗難事件」.壮大なアイデアとケチくさく現実感のある実践の落差がおかしい.「接触の儀式」.ワンアイデア勝負のファーストコンタクトもの.冷静に考えればかなりムチャのある話なんだけどオチまで含めて妙にユーモラス.冥王星通信」は宇宙へ漕ぎ出そうというフロンティアスピリットとラストで変に目頭が熱くなる.それとは対照的なのが安楽死星」.宇宙開発が安定期を迎え,生きる場所を失ったかつてのパイオニアたちの行く末.ウェット極まりなく,この一冊を締めくくるに相応しい一編かと.