瘤久保慎司 『錆喰いビスコ9 我の星、梵の星』 (電撃文庫)

「いまだに納得いかねえぜ。見ろ、狂犬じみたこのツラの、どこが俺なんだ!? こんなのが世の中に放たれてみろ。法も平和もあったもんじゃね~」

「あんた鏡見たことないの?」

家族団らんの時間を過ごしていたビスコとミロたちの前に、真っ赤に燃える隕石が落ちてきた。隕石の正体は巨躯の女、赤星ビスコ。DNAのように螺旋を描くふたつの並行宇宙のもうひとつから現れた、もうひとりのビスコだった。

錆神ラストの手で滅びかけた並行宇宙から、もうひとりの主人公(性別転換)到来。かつて倒した怨敵の復活と共闘に、ふたつの世界の神の対決、裏切りと、燃える展開をこれでもかと詰め込んだ、さながら週刊少年漫画的仏教SF・夏休みスペシャル劇場版のごとき大盤振る舞いの第九巻、完結編の前編。似たようで対照的な並行世界で、それぞれに生まれ育った男女ふたりのビスコが衝突し、ともに愛するひとのために戦う。その根底にあるのは様々な「愛」。今まで以上に強く打ち出された愛の形に、ちょっと泣いてしまった。待たされただけあって本当に良いものになっていたと思う。次回最終巻、楽しみにしています。