1943 年から 1956 年にかけて発表された 11 編の短編を収録したクラークの第一短編集.空想科学理論を演繹的に展開していく,情よりも理を優先させた短編の組み立てはエンターテイメントというには固い印象を受けることも多かったけど,ア
イデアにティンとくる短編は抜群に面白い.技術的にはるかに優れたはずの軍が新兵器を開発するたびに押されていく
「優越性」はア
イデアとユーモアがかっちり噛み合った傑作.この短編集のベストかな.予備の空気を失った宇宙船に閉じ込められ,追い詰められていく二人の男がとった行動を皮肉っぽく描いた
「破断の限界」は SF 短編でよく扱われるテーマを,しかも 60 年前に描かれたものなのに古びた感じがほとんどしないのが驚き.ある異星の異形の文明発展史を描いた
「第二の夜明け」は派手さはないものの壮大な「はじまり」あるいは「未来」を予感させるエッセンスに充ち満ちている.この三編が特に良かったです.