六塚光 『ペンギン・サマー』 (一迅社文庫)

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

標高約 500 メートルの白首山を中心に持つ人口約 10 万人の地方都市・白首市.動物園から誘拐されたペンギン,白首市で暗躍する謎の結社赤面党,白首山にあるという埋蔵金の噂.街に伝わる伝説の「クビナシ様」を探すため,相馬あかりと東田隆司が白首山へ登ろうという場面から物語ははじまる.
出会いと別れの物語,かな.白首市と白首山,クビナシ様にまつわる事柄が,文献・日記・モノローグ,その他さまざまな形式でとりとめなく語られる.章ごとに断片的な記述が追加され,そもそも何を中心に語られているのかが分からないながらも淀みなくページは進み,終わってみれば物語の環は閉じているという.どこか不思議な読み心地は抑えた文体もあるんだろうけど,どこが終わりとも始まりとも決められない構造と,その構造から「すでにあったこと」を描いた「記録」であることへの寂しさみたいなのも原因にあるのかなあと.うまく言葉がまとまらないんだけどすんげー面白かったです.