東出祐一郎 『ケモノガリ』 (ガガガ文庫)

ケモノガリ (ガガガ文庫)

ケモノガリ (ガガガ文庫)

すべてにおいてパッとしない平凡な高校生,赤神楼樹は自身の「才能の欠落」を嘆いていた.大きな転機は東欧の小国での修学旅行の最中.各界の有力者が集うクラブにクラスごと拉致されたとき,隠れていた楼樹の才能が明らかになる.
東出祐一郎のオリジナル小説デビュー作は血煙薫るヴァヴァヴァヴァイオレンス小説.ゲームとしてマンハントを楽しむ権力者たちのクラブ,クラブに雇われた異形の殺人者たち,次々に狩られる仲間たち,そして危機に瀕して目覚める少年の殺人者としての才能.狩られる側から狩る側へ,お膳立てはじゅうぶん.なんだけど,もうひとつすっきりしないかなあ.主人公がただの殺人鬼と一線を画すのは幼なじみを守るという理由があるから.でもやたら大量に血の流れるこの話において,殺しの理由としての幼なじみには取って付けた感も強く.いっそスウィアジンスキーみたく投げっぱなしでなんも残らない話にした方がすっきりしたのではという気がした.もはやライトノベルではないけど,要は幼なじみいらないんじゃね,という(ひどい).己が生存するための本能と仲間を助けなければという理性の葛藤は逆にただのヴァイオレンス小説には無い部分,かな.そこは良かったと思う.