津原泰水 『バレエ・メカニック』 (早川書房)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

造形家の木根原の娘・理沙は,7 歳の時に海辺での事故で脳死状態に陥った.それから 9 年.脳幹を残し大脳の大半が死滅した彼女は,東京の街を自分の脳へと仮託する.街は夢想に包まれる.
曰く「機械じかけの幻視」.東京が見舞われた混乱の第一章.「理沙パニック」後に消えた理沙を木根原とともに追いかける,理沙の担当医・龍神の現在と過去を描いた第二章.いつとも知れない数年後,大きく形を変えた〈現実〉を生きるリサズ・チルドレンとドードーの話が第三章.七本脚の巨大蜘蛛が,死んだ姉の記憶が,ホログラムに包まれた〈現実〉が生み出す幻想の数々.いずれ目眩に襲われた.しかしなんだろう,これだけの大仕掛けを用意しながらやけに静かで粛々としているというか,現実から大きく乖離している気がしないというか,この読み心地.それとどなたか指摘していたけど,章ごとに地の語りが違うのな.二人称,三人称,一人称と三人称.これは「誰」が見ている風景なのか.考えようするとやっぱりくらくらした目眩に襲われるのでした.私の頭が悪いだけかも分からんけどね.