宮澤伊織 『神々の歩法』 (創元日本SF叢書)

「新しい敵が現れたのならなおさらだ。ミスター・マッケイ、ささやかながら忠告しますがね、ニーナの機嫌を損ねないほうがいいですよ」

「脅すつもりか?」

「八歳の女の子を怒らせるのは実に簡単で、機嫌を直してもらうのは本当に大変だというだけですよ」

2030年。怒れる神によって砂の海と化した北京に、米国の戦闘サイボーグ部隊が降り立った。神の名はエフゲニー・ウルマノフ。ウクライナの農夫だった男である。

宇宙から降りてきた狂える神々と、戦争に最適化された米ウォーボーグ部隊の戦いを描く。第6回創元SF短編賞受賞の短編と、その続編を収録した連作長編版。砂漠と化した紫禁城、岩手の大麻農場に現れた死の女神、コンゴ共和国のゾウが崇める宗教、エリア51を襲う現実改変ブルートフォース攻撃。基本的にはゆかいなボンクラSFなんだけども、あとがきでも触れているとおり、色々なタイミングが重なった結果、ネタの危険度が(特に書き下ろしで)幸か不幸か数段上がっているのが面白い(関係者はそれどころではないだろうけど……)。

短編版での各種一発ネタにフォローとディテールが与えられたおかげで、SFの面白さとボンクラ度がぐっと上がっていた。特に、ウォーボーグのビジュアルってちいかわの鎧さんなのでは、と気付いてからはダメだった。楽しゅうございました。



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