至道流星 『神と世界と絶望人間 00-02 雷撃☆SSガール2』 （講談社BOX）

神と世界と絶望人間 00‐02 雷撃☆SSガール2 (講談社BOX)

「現実が嫌なら死んどけ。夢、広がっとるかもしれんで」

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2000 年 11 月 20 日．スタンフォード大学大学院で社会心理学を専攻する桜井海斗のもとへ，海斗の父でありフリーの国際政治ジャーナリストである桜井啓司が訪れた．啓司はプラチナのペンダントと意味ありげな言葉を息子に残して立ち去る．唐突な訪問に首をかしげる海斗だったが，その 10 日後，父が交通事故で死んだとの報せを受け取る．茫然自失する間もなく，父の復讐のため，海斗は大きな陰謀の渦に身を投じる事になる．
「リアル経済エンターテイメント」こと『雷撃☆SSガール』の第二弾．20 世紀初頭より世界経済を影から支配し，「世界統一政府」の設立を目論むブランフォート財団との「経済」（＝金）を武器にした戦い．これは良かった，というか風呂敷の広げ方が素晴らしかった．FRB 設立も世界恐慌も二度の世界大戦も世界各地のテロ・紛争も 9・11 も新型インフルエンザもすべてはブランフォート財団の陰謀だったんだよ！　アメリカ経済さえ奴らの手駒だったんだ！　のっけで異論を挟む間もなくポンポン繰り出される陰謀論にいやでもテンションが上がる．アインシュタインの精子とブランフォートの元女優の卵子との人工授精で生まれた関西弁天才幼女リザといい，共産主義を真面目（不器用）に信奉し，革命と共産主義国家樹立に夢燃やしながら上野でホームレスに身をやつす天然記念物男の御劔といい，キャラクターもやたらめったら大風呂敷，いい味が出ている．
経済戦略の妥当性は正直よく分からないので置くとして，大衆がいかに愚かか馬鹿か，本筋以外の部分でやけに攻撃的に煽っているのはわざとなのか天然なのか．前作から読んでてもいまひとつ判断しにくいのもまた味やね．しかし世界統一政府プランという最重要情報が暗号化もされてない SD カードに入っているあたりは（父の死と引き換えとはいえ）なんだかなぁとは思うが．この点が引っかかるか否かで話そのものを肯定できるか否かが決まりそうな．私はとりあえず目をつぶっとく．続編の「03-08」（購入済み）でどのように風呂敷をたたんでくるのか，楽しみに読みたいと思います．