藤谷治 『ぼくらのひみつ』 (早川書房)

ぼくらのひみつ (想像力の文学)

ぼくらのひみつ (想像力の文学)

今日子はアーッハッハッハッハ! と大声で笑った。
それからもう一度、セックスをした。
「一分間に二回もやったのは、さすがに初めてだね。」
といって、今日子はもう一度大笑いした。

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2001 年 10 月 12 日の午前 11 時 31 分.原因は分からないし,こんないいかたはおかしいのだけれど,今日も明日も明後日も,ぼくらの時間だけは,2001 年 10 月 12 日の午前 11 時 31 分で止まってしまっていた.道に落ちていたノートにはそんなことが書かれていた.
「時間が止まった」とは言いながら,お腹は空くし汗もかく.晴れわたったお昼前の時間が永遠に続く(夜は来ないし時計も進まない)ものの,人々は普通に生活を行っている.どうやら「時間が止まった」ことに気づいているのは「ぼくら」だけらしい.そんな世界での,ゆるゆるだらだらとした,少し憂鬱な「スローモーションの新・青春小説」.時間が止まった理由のヒントと,その止まった時間の中で出来ること・実際やったことをつらつら描きながら,見えるとも見えない道筋をつけていく.嫌いではないんだけど,非常にもやっとした読み応えで,どこがいいとか悪いとか言うのが難しい小説であることだと思った.まあ早く言うとよく分からなかったってことなのですが.ラストの意味は(なんとなく)分かるのだけども,ここへ辿り着くのにこんな面倒くさい手続きを踏まないといかんのかなぁ,という気はした.無粋な読み方していたかもしれないですね私.