北野勇作 『どろんころんど』 (ボクラノSF)

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

月の下、ヒトデナシとセルロイド人形とレプリカメが歩いている。
ひょろ長いヒトの形。
小さな女の子の形。
大きな亀の形。
そんな三つの影が、道の上にくっきりと落ちている。

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ワンダーランド社が開発した少女型自律式人工知能,略称・アリス.彼女が休止モードから目覚めると,そこはヒトのいないどろんこに埋もれた世界になっていた.テレビの中にいるかもしれないヒトを探して,二足歩行型模造亀レプリカメの万年 1 号,ヒトデナシの係長と一緒に,アリスは旅に出る.
ヒトの真似をしながらヒトを待ち続けるヒトデナシが大量に暮らす,どろんこだらけのおかしな世界.ヒトはどこへいってしまったのか.奇妙な三人の奇妙な旅.これは良かったぁ.真似っこばかりなのに空虚さだけでない,不思議な優しさのある世界がすごく心地良い.北野勇作らしいユーモアをしっかり交えながら,とてもまっすぐな成長ものでもある.
レプリカメにヒトデナシも登場ということで,作者の集大成でもあるのかな.旅の終わりと,『かめくん』の世界につながる(のかもしれない)ラストにじわっときた.年間ベスト級は間違いなし.素晴らしい作品でした.