- 作者: 柴村仁,六七質
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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私はいくつかある土俵のうちの一つに近づいた。闘鶏を見るのは初めてだったので興味があった。
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しかし、よくよく見ると、土俵の中にいるのは、どうも、軍鶏ではないようだ。全体的なフォルムは軍鶏に似ているのだが、不自然なほどに大きいし、それに、頭部が猿か人間のようにつるんとしている。霊長類っぽい目と鼻と口があり、嘴がない。だから嘴で突き合うのではなく、研いで尖らせたような門歯と犬歯で、噛みつき合っている。他の土俵にいるのもすべて同じような謎の生き物だった。人間並みに表情があるようで、勝利したものは壊れたおもちゃのようにゲラゲラ笑っていたし、敵の威嚇に怯えたものはヒイヒイと情けない声を上げて泣いていた。
大晦までの僅かな間だけ立つ「
細蟹の市の警護役である赤腹衆のサザと,サザに拾われたマドウジのカンナを中心に描かれる連作短篇.神話を下敷きに,ホラーを上からまぶしつつの幻想小説,かな.暗く混沌とした市,仮面をつけた人びと…….闇と光のコントラストが目に浮かぶテキストに,毒と哀しさをしっとりと含んだ物語の組み合わせは雰囲気じゅうぶん.
加えて言いたいのは,カバーイラストの素晴らしいこと.一枚のイラストとしても良いのだけど,作品の世界観をこれほど雄弁に語ったカバーイラストはそうそうないのではないかな.カバーを見て気になったのならそのまま手にとって損はないと思うよ.