小林雄次/監修:円谷プロダクション 『ウルトラマン妹(シスターズ)』 (スマッシュ文庫)

「何で女の子のお前がウルトラマンになれるんだよ! ってゆうか、何度も言ってるけど、女の子だから『マン』じゃないだろ」
「うん、ジャンヌも私と同じ、女の子なんだ」
「ジャンヌ?」
聞いたことのない名前が出てきた。
「私と一心同体になったウルトラマンの女の子。結構おっちょこちょいだけど、まぎれもなく光の国の出身者だよ」

Amazon CAPTCHA

ニートの翔太と中学生のあかりの月島兄妹は,一年前に両親を事故で亡くしふたりだけで暮らしていた.翔太があかりに引っ張られて向かった面接試験の帰り道,ふたりは巨大な怪獣に襲われる.間一髪と思ったその瞬間,翔太はピンク色の光に全身を包まれる.
宇宙からやってきた光の戦士はドジな女の子だったでござる.怪獣やウルトラマンが地球に現れなくなって数十年が経ち,それらが教科書の中の出来事になった世界を舞台に,新しい世代の光の戦士たちが活躍する.円谷プロ監修ということで話題になった,スマッシュ文庫のレーベル内レーベル妹組の一冊.どう見てもイロモノかと思いきや,読んでみるとこれが案外しっかりしている.初代ウルトラマンの第一話のオマージュである第一章からはじまり,随所にシリーズのオマージュを取り込んでいる.父兄参観や事故のその後など,兄と妹の関係もしっかりと触れているのがポイント高い.オリジナルシリーズとライトノベルそれぞれの持つお約束や,良いところをうまく取り込んでいる感じでとても楽しい.
科特隊に相当する組織,BURK こと Bureau of Ultra Repose Keeping(ウルトラ平和防衛局)の描写が少ないのが不満といえば不満かなあ.私は特撮にはあまり明るくないので見落としているところも多いかもしれないんだけど,特撮好きもラノベ好きも,とりあえず試しに読んでみればいいと思うよ.