さがら総 『変態王子と笑わない猫。5』 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。5 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。5 (MF文庫J)

快楽と苦痛は同義語で、地獄と天国はコインの裏表で繋がっている。この瞬間が永遠に続いて世界は今すぐ滅べばいいのになあと思った。

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小さな唇がぴくりと開いて、なにか言おうとしたとたん、
「……確かにな。いまさら資格なんてねえよな……」
先にツカサさんが自重するように笑う。娘の行為を全面的に肯定してしまった。
それで、王様の言葉は行き場を失う。
責めなくちゃいけないことと、謝らなくちゃいけないこととが彼女のなかでごっちゃになって、なにひとつ言い出せなくなってしまったのだ。

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願ったものはなんでも引き寄せてくれる,ただし願わない形でしか引き寄せてくれない笑わない猫.子どもの頃の記憶のない横寺に笑わない猫が引き寄せたのは,10 年前の過去そのものだった.横寺と月子はそこで 6 歳の横寺と,今は亡くなってしまった筒隠姉妹の母・ツカサに会う.
10 年前に生まれた記憶の齟齬の原因.そして,一番大事なものと,どうしても放っておけないもの.後者を選んだ結果,何が起こったのか,という話.相変わらず,テキスト使いのセンスはすごい.言葉のチョイスもずば抜けている.読んでいる間,ハッとさせられる表現があちこちにある……というのは前も書いたかな.そんなテキストにごまかされ,変態王子横寺の一人称も,どこまで本心が現れているのかまったく信用できないという.前半の横寺への小豆梓の依存など,わりと今回露骨に描いているように見えたのは気のせいかな.ストーリーも地の文も,非常に気持ち悪い(賞賛半分,そのままの意味半分)のだけど,目が離せない.
ということで色々書いたけど良かったです.気に食わない部分も正直あるのだけど,認めざるを得ないというかな.普段から好んでラノベを読む読者だけでなく,もうちと色んな方面のひとの感想を聞いてみたい気がするのよなー.