- 作者: 竹林七草,藤ちょこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/05/18
- メディア: 文庫
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吾輩は猫又である。名前はまだない。
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──と、始められたら、かの大文豪の処女作とおおむね同じ出だしになるのだが、残念ながら吾輩にはれっきとした名がある。
とはいうものの少しゆえあって吾輩、本当の名を迂闊に他人様に教えることはできん。
そこで吾輩の名は、仮に『タマ』としておこう。
タマは,陰陽師として代々名を知られてきた藤里家に住む猫又である.ただし,嫡子である桜子には,タマが猫又であることだけでなく,陰陽師としての藤里家のことも知らされていない.前代の陰陽師である祖母・春子が亡くなり,桜子がひとり残されたところから,物語が始まる.
第 6 回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.陰陽師でもある猫又の物語.ふたりの少女に残された思いと,ふたりの少女が亡き祖母に送る気持ちを,猫又タマと,桜子の親友・命,それぞれの一人称を交互にしながら描いていく.読み始めて,洒落の効いたテキストと,細やかに描かれる猫又や狢のしぐさにまず惹かれる.なんというか,人間臭いしぐさをまず過剰に,かつしっかり描いて見せてくれるので,つかみはオッケー,みたいな感じで物語に引っ張り込まれるのな.そこから,祖母へ焦がれる桜子に,八尾の狐,犬神を絡めながら,呪い・恨みにフォーカスしてゆく物語も強く印象に残る.「呪う」ということがどれだけの意味を持つのかを,はっきりした言葉で表現しているのが,この物語にとっての救いなのかなー,とか思った.てことで良かったです.今後の活躍も期待してみていきたいと思う次第です.