竹林七草 『猫にはなれないご職業2』 (ガガガ文庫)

猫にはなれないご職業〈2〉 (ガガガ文庫)

猫にはなれないご職業〈2〉 (ガガガ文庫)

吾輩は無職である。まるで仕事がない。


――とまあ、そんな哀しい台詞をぽろりとぼやいてしまいそうになるほど、吾輩日々の仕事がないのである。
かの有名な歌詞にもあるように吾輩のような妖異にゃ、学校も試験もなんにもないのは知っていたが、無職になって仕事を斡旋してくれるサービスもないことに、ようやく気がついた。
まったくもって世知辛い世の中である。

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藤里家に暮らす猫又にして陰陽師のタマには不安があった.仕事がないこと.おかげで日々のヤニにも事欠く始末.そして,藤里家の跡継ぎである桜子には,どうやら陰陽師としての才能がまったくないこと.そして,修行と称して出かけていった桜子が「鬼を祓ってほしい」と頼む不思議な少女を連れて帰ってきたこと.
猫又陰陽師の活躍を描く現代怪異譚の第二巻.人情話と妖異・怪異譚は食い合せがいいよなあ.タマの洒落た語りの楽しさなど,一巻(感想)よりも全体的に上手くなっている.そして,やっていることは一巻よりも容赦がない.ライトノベルとしての手加減を緩めて少し直せば,角川ホラー文庫でもいけるんじゃないかな.「鬼」の存在や,観測問題(?)で解釈した神隠しといったアイデアのひとつひとつも面白いのだけど,個人的にすごく良いと思ったのが,ヒロインである桜子の存在感.天才なのか,アホなのか,露出狂なのか,最後まで読んでもさっぱり読めない.例えるなら,『のぼうの城』の成田長親みたいな(つっても映画しか観てないのだけど).最後までつかみどころのない立ち位置なのに,存在感がはっきりしている,珍しいキャラクターだと思う.説明部分で露骨に文章が詰まってテンポが悪くなるなど,緩急はもうちょいな印象があるけど,期待して追っかけていきたい所存です.