靖子靖史 『ハイライトブルーと少女』 (講談社BOX)

ハイライトブルーと少女 (講談社BOX)

ハイライトブルーと少女 (講談社BOX)

だから、そのときはあの「たばこ」の看板を見ても、なんの感想を抱くこともなかった。風景の一つとして、ただその前を通りすぎようとしていた。
その風景が――少女を目にしたとき、一変した。
大げさな表現かもしれないが、店番をしていた少女一人を残し、その他の一切が消えたのだ。僕の目には、少女の姿しか映っていなかった。そのときも、その子は少し眠たそうで、髪は美しい黒髪だった。
目を奪われ、心を奪われる。

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会社員の僕が喫煙を始めたのは就職してからのことだった.きっかけは,引越してたまたま通りかかったタバコ屋の店員の少女に一目惚れしたこと.それから僕は毎朝タバコ屋で一服してから会社に向かうのが習慣になっていた.
26歳会社員がタバコ屋の少女に持ちかけられたあることとは.タバコ屋の娘(中学生)に一目惚れした結果,毎日店に立ち寄るために煙草を吸い始めた26歳会社員,という設定と,その描き方にイヤンな感じのリアリティがある.気持ちは分かるというかなんというかね.登場人物の現実的な配置と,それぞれの大胆な行動が,なんか噛み合っているような噛み合っていないような,不思議な両輪になっている.デビュー作は読んでいない(買って積んでいる)のだけど,変わった語りをするひとだなーと思った.ふわふわした変な話でした.