長野まゆみ 『改造版 少年アリス』 (河出書房新社)

改造版 少年アリス

改造版 少年アリス

「蜜蜂、ふしぎな気がしないか? 玄関にしても教室にしても、こうも簡単にとびらがひらくなんて。だいいち、あの鉄の門だって、なんだかいつもより小さかった。」
「満月だからさ。」
つまり、理由なんかない。玄関もとびらもあいていた。それだけのことだった。
「そうだね。」
「そうさ。」

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友人の蜜蜂が忘れた鳥の本を取りに,いっしょに夜の学校に行ったアリスは,そこで不思議な出来事に出会う.長野まゆみのデビュー作の「改造版」.少年アリスと少年蜜蜂と犬の耳丸,空に縫い付けられる月と星,花と植物の名前,夜の教室に集まる教師と生徒たち…….童話のような不条理で綺麗な光景がしっとりと静かに描かれる.派手な出来事が起こるわけではないけど,不思議な余韻をのこすラストまで,非常に綺麗な流れができていると思う.個人的にはもうひとつ引っかかる部分がなかったかなあ.