浅倉秋成 『フラッガーの方程式』 (講談社BOX)

フラッガーの方程式 (講談社BOX)

フラッガーの方程式 (講談社BOX)

『フラッガーシステムによって構築されたストーリーはきちんと的確な伏線を張り、余すことなく美しく回収、更には求めるラストシーンに向けて、誰もが納得のいく一級の物語を作り上げてくれます』
やっぱり村田さんはハードルを上げすぎていた。これのどこが一級のストーリーと感動のラストだと言えるのだろう。まったく実に下らないったらありゃしない。
下らない。下らなすぎるが、
しかし最高だ。

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フラッガーシステムとは,何気ない会話や行動をフラグとして認識し,「誰もが現実において、物語の主人公になれるシステム」である.そのデバッガーとして選ばれたのは平凡な高校生,東條涼一.憧れの佐藤さんとお近づきになれるかもと飛びついた彼の目の前に,次々と「最高のご都合主義」(深夜アニメ準拠)が襲い掛かる.
第13回講談社BOX新人賞Powers応募作.受賞作の『ノワール・レヴナント』(感想)と同時に応募してたのかな.「主人公」として選ばれた主人公のあらゆる言動が,「フラグ」として処理され,次の行動に影響を与える.と前置きされたら,読むにもうっかり気を抜けない.で,深夜アニメはもう飽きたお……と,思わせといてからの,怒涛のフラグ回収.この流れがすげー美しい.同じテーマなら,ミステリ的な意味でもっと上手に書ける作家はたぶんいると思うのだけど,このラスト,プラスこの気持ちいい読後感は作者ならではのものではないかな.「テンプレートとはカレーライスである」から始まるエピローグもいいな.デビュー二作目だけど,この作者は信用していいと思う.しかしこれ『ノワール・レヴナント』と刊行順が逆だったら,印象がけっこう違ったんじゃないか.