石川博品 『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』 (ファミ通文庫)

「タイチさん、ささいなことに思えるかもしれませんが、そういうところがあなたを恋愛・幸福・生きがいといったものから遠ざけているのですよ」
そういうとこってどういうとこよ?」
「恋愛に対して構えすぎなのです。人を愛すること、人に愛されることは超自然的なことでも奇蹟的なことでもありません。愛というものをもっと自然に受けいれてくださいナ」
「ンなこといったってよォ……」
「自然に、あくまでも自然に――武士(もののふ)が死を思うように、カニクイザルがカニを思うように、ですヨ」

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キング・オブ・クズと呼ばれた高校生,中野太一の前に現れたカマタリさん.2655年の未来からやってきたカマタリさんは,日本の危機を救うためと称して太一に協力を願い出る.
曽我野由真子・笑詩・入香の三姉妹をクズなりに籠絡し,日本の未来を救うのだ.「耳刈ネルリ」以来約2年ぶりの新刊は,どことなくドラえもんというかラブやんというか.しかしうまいなあ.あらすじレベルで見るとよくあるタイプの作品だと思うのだけど,ちょっとした動作を挟んだり,口癖を繰り返し入れたりだとか,ちょっとした部分でものすごい大きな差を作れるのがすごい.あとなんというか,一本のフィクションを作るのに無駄な要素なんじゃないの,と思うものをそのまま残しているのよな.たとえば主人公の兄弟仲が妙に良かったり,逆に三姉妹の次女と三女がやたら仲が悪かったりするけど,それがギャグになってたり伏線になってたりするわけではなく,「そういうもの」として描かれる.自然な流れ(ライトノベル的に)と,不自然な歪みが共存して,この変な読み味を生んでるのかなあ,と思いました.なんかうまく言葉にまとめられなくてごめんなさい.