小野寺整 『テキスト9』 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

テキスト9 (Jコレクション)

テキスト9 (Jコレクション)

……トッカ、ヨッホ、ニィ、ソンガ、バッフーン。エレツ、エンロオッド、スアッサニ、クァーガ、フェイエド。以上が、近年になってクラウド9の遺跡から出土し、復元されたテキストの全容である。考古学会ではテキスト9と呼ばれており、僕はこれを、創世神話の『原典』にもっとも近いものだと考えている。

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仮定物理学者のカレンは,ムスビメと呼ばれる絶大な権力を持った機関から召喚を受け,ある女の追跡を依頼される.“私”という概念を翻訳して別宇宙へと移動するトランスレート移動によって,惑星タヴへと飛ばされたカレンは,緑色のゴリラと出会う.
「世界の在り方を問い掛ける要約不能の超傑作」の第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補作.多層化した世界をどのように認識し解釈するか,意味のないところにいかに意味を見出すか.第一章から第二章あたりは,SFとストーリーを追加して技量と少しの下品さを抜いた木下古栗という印象.話が動き出すまでかなりかかるし,作中の例えがいちいちどこか外している感じがして退屈な時間が長いかなあ.ムスビメの正体,謎の概念トーラー,スタッシュの意味が次々と明らかになる後半は面白くなる.結論は明快……だと思うんだけど,結末まで読んでさらにもう一周しないと本当のところはわからなそうな気もちょっとする.