岩城裕明 『煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる』 (講談社BOX)

煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる (講談社BOX)

煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる (講談社BOX)

未練はない。
そう思っていた。
「私の守護霊になってくれる?」
最後に思い出したのは、彼女の声だった。
私は舌打ちをして、死んだ。

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未練を残して死んだ者は幽霊となり,煉獄を漂うことになる.幽霊となった者は,現世に干渉することができない.コンビニに住み着く幽霊,キリンとアオバのコンビは,そんな幽霊たちの依頼を解決する便利屋稼業を営んでいた.
未練(と言っても本人もどんな未練があるのかわからないこともある)を残しているのに,生者と関わることすらままならない.そんな,あちこちにいる幽霊たちと,それをお助けする便利屋幽霊コンビの,切なくもユーモラスな連作短篇集.見えるひとと見えないひとの話,ということでデビュー作の『ようこそ、ロバの目の世界へ。』に通じる雰囲気もあるかもしれない.それぞれの短篇は実話怪談とその種明かしのような形で描かれる.どちらかというとユーモア寄りなのかな,と思っていたら,後半はまさに「優しい幽霊」譚.いろいろな伏線が重層的に絡み,不思議な幽霊コンビの秘密が明らかになる後半はあまりに切ない.ほろりとさせられてしまった.デビュー作から好きで読んでいるけど,小説としての完成度はいちばんだと思う.良かったです.