牧瀬竜久 『悪ノ黙示録 ―裏社会の帝王、死して異世界をも支配する―』 (ガガガ文庫)

だが仮にだ。もしも御伽噺のように、人生を再びやり直すことができるとしたら。

そして、そこに今の人格と記憶がそのまま宿されていたとしたならば。

「俺は――迷うことなく再び悪道を征く」

レオ・F・ブラッド。裏社会の帝王として、数十年にわたりすべてを手にしたその人生が、今まさに絞首台の上で終わろうとしていた。次の瞬間、目を覚ましたレオが見たのは、見知らぬ町、見知らぬ自分、見知らぬ世界だった。何の力も持たないスラムの少年として二度目の人生を生きることになったレオは、異世界で己の「悪」を貫くことを決意する。

第17回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞、異世界転生ピカレスクロマン。己の矜持である「悪」を胸に、前世で手に入れられなかったものを異世界で手にせんとす。世界なんてだいそれたものはいらない、自分たちの小さな庭と家族さえあればいい。そのための「悪」と、対照的に形のない「正義」、という物語のコンセプトはいいと思う。しかし、転生してからの話の流れがいくらなんでも都合よすぎるのが気になった。次巻以降でフォローは入るんだろうけど、ページ数の関係なのか、一巻の区切りが違えば印象も違ったのではないかと思った。