谷山走太 『ピンポンラバー』 (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

太ももを隆起させ、足の親指の付け根で地面を掴む。爆発的に加速した身体は風を超え、音をも超える。

視界が狭まり、音が消えた。

そんな世界で俺が見つめるのはただ一つ。宙に浮かんだ白い点。その一点めがけて全力で腕を振るう。

ここは私立卓越学園.一流の卓球選手を養成する中高一貫校である.かつて『音速の鳥』(ソニックバード)と呼ばれた天才卓球少年,飛鳥翔星もこの学園の門を叩いていた.彼の目的はひとつ.小学生時代に唯一の敗北を喫した名も知らぬ少女を探し出し,勝利することだった.

卓球エリートたちが集う学園で描かれるスポ根小説.第12回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.実力主義のランキング制度,かっこいい二つ名,努力,友情,勝利,そして甘酸っぱい気持ち.数多あるスポ根のお作法を丁寧になぞった,オーソドックスな物語ではあるのだけど,卓球が好き,楽しいという主人公の気持ちが強く強く前面に出ている.「卓球が超好き」だから努力もいとわないし,「卓球で強いヤツが、世界で一番カッコイイ」からこそ勝利したい.これ以上の説得力があろうか.

嫌味のない素直な描き方がとても気持ちよい.スカッとする良い卓球小説でありました.