二月公 『声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?』 (電撃文庫)

声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)

声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)

  • 作者:二月 公
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫

おかしな話だ。

作品に声を吹き込むことに憧れたのに、要求されるのは声以外のコトばかり。

そこに全く疑問がないわけではない。

歌種やすみ(芸名)こと佐藤由美子は駆け出しの新人声優.学校では芸能活動のことを隠し,ギャルとして通っていた.そんなある日,同じ高校生声優の夕暮夕陽とラジオをすることになる.夕暮夕陽は同じクラスの地味な女子,渡辺千佳だった.

同じクラスで同じ職業,それなのに学校では接点がなくてそりも合わない正反対のふたりは,ラジオは理想のクラスメイトを演じることになる.新人女性声優の百合営業小説という,ピンポイントなテーマで大賞を獲った第26回電撃小説大賞・大賞受賞作.ギャルと地味女子,芽の出ない駆け出しと人気出はじめ.人気,実力,コネ,アイドル売りにセット売り.声優という仕事へのスタンス.いっしょの仕事を通じてクラスメイトでありライバルでもあるふたりの考えと関係は変化してゆく.

スポ根ものようなふたりのライバル関係と友情,そして職業人としての冷静なプロ意識が入り混じったストーリーは読んでいて小気味良い.アイドルものとスポ根の相性がいいのは今では周知の通りだけど,スピード感がかなり早いのはいかにも現代的だと思う.幕間のストーカーやらネット炎上のくだりは唐突感があったけど,これもまあ現代的ではあるのかな.良かったと思います.