宮内悠介 『スペース金融道』 (河出書房新社)

スペース金融道

スペース金融道

「金融商品のモデル化にあたっておれたちが前提としたのは、価格の変動を運動量として見たとき、それが光に比べて非常に遅いということだ。実際の人間の取引においては、それで問題ない。だが、秒あたりの取引回数が無尽蔵に増えた場合――価格の変動が限りなく光速に近づいたとき、量子金融工学はアインシュタインの相対性理論の影響を受ける

人類がはじめて移住に成功した太陽系外惑星,二番街.新星金融二番街支社に勤務するぼくは,上司のユーセフに連れられて,債権回収のため宇宙中を飛び回っていた.

「スペース金融道」「スペース地獄篇」「スペース蜃気楼」「スペース珊瑚礁」「スペース決算期」の5篇を収録した,宇宙を股にかける金融SF短編集.量子金融工学だったり,アンドロイドの借金だったりといった最新のアイデアと奇想の数々を,どこか懐かしいドタバタとともに読ませてくれる.楽しかった.