松屋大好 『無双航路 2 転生して宇宙戦艦のAIになりました』 (レジェンドノベルス)

無双航路 2 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

無双航路 2 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

「いいえ、ここにいるのは、記憶にすぎません。以前のわたしと同じように考え、同じようにはなしますが、わたしではないのです。わたしのクオリアは、もうないのです。いまのわたしは魂のないAIと同じ。皮肉ですね。あなたは肉体はないけれど魂がある。いまのわたしは、肉体はあれど魂がないのです」

連合艦隊に進攻した帝国皇女ソハイーラ.捕虜になっていたおじにして前皇帝・ガルバを期せずして救出したことにより,皇位継承と指揮系統をめぐる意図しない緊張状態が発生する.混乱の中に現れた連合の超大型戦艦のたった一隻に,帝国艦隊は追い詰められようとしていた.

数万年前に誕生した王政ローマは宇宙で戦乱の中にいた.「人間」であり「AI」でもあるアサガヤシンは戦場を駆ける.相変わらず「無双」からは程遠い,ハードでシビアなスペースオペラ.わざとらしいほどオールドスクールなスペオペと,現代的な意味での転生もの,及びSFの幸せな融合であり,昇華であり.お約束を外してくるストーリーの手綱取りが見事だと思う.

連合艦隊が繰り出した,AI規範を破る禁じ手とは.聖櫃の中にある,時間の止まった仮想世界の三鷹に現れる宇宙戦艦.“月”と呼ばれる巨大な人工知能.AI規範に縛られたAIと,肉体に縛られた人間,そのどちらでもないアサガヤシン.目まぐるしいガジェットの数々から,和風ニュー・スペースオペラというか,ハンヌ・ライアニエミを日本人が書くとこうなるのだ,みたいな印象を受けた.楽しかったです.すでに三巻もあるので近いうちに読みます.