斜線堂有紀 『死体埋め部の悔恨と青春』 (ポルタ文庫)

死体埋め部の悔恨と青春 (ポルタ文庫)

死体埋め部の悔恨と青春 (ポルタ文庫)

朝日はこの上なく眩しかった。さっきまで震えていたはずの身体が、生まれたての日差しに包まれていく。

恐ろしいことだと思った。このままだと、一連の出来事が美しい文脈に改竄されてしまう。祝部の味わった全ては単なる悪夢だ。常軌を逸した狂乱だった。それなのに、こうして朝日で締め括られると、何もかもが浄化されてしまいそうで怖かった。出口を求めるように、織賀の方を見る。

上京したばかりの新大学生、祝部は、飲み会の帰り道でナイフを持った何者かに襲われ、相手を殺してしまう。途方に暮れる祝部の前に、赤いジャージを着た男、織賀が現れる。同じ大学の先輩で「死体埋め部」の部長を自称する織賀は、死体の処理を請け負うという。

部長と副部長だけの死体埋め部、その青春の日々を描く。かなり異色の青春ミステリ小説。一種のピカレスクロマンというのかな。死体に込められた物語を語り、埋めてゆく。織賀善一という狂人の強烈な個性と、それに対する信仰のような気持ちがあまりに生々しい。腹の中にずんと重いものが残るような、特異な読書体験でした。



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