- 作者:屋久ユウキ
- 発売日: 2021/01/19
- メディア: Kindle版
「私は、私のために大切な自分を変えようとしてくれた、その事実だけで、十分なんです」
季節は冬。友崎は菊池さんとすれ違い状態になってしまう。長く身に染み付いてきた個人主義で「恋愛に向いていない」と指摘された友崎は、菊池さんの、日南葵の、そして自身のそれまで気づけなかった面に向き合うことになる。
物語を構成していた大前提が一周回って、すべてひっくり返る。シリーズ第九巻。個人と個人が繋がる理由が形を変えて矛盾になり、業になる。最高に良かった。中高生のときに読んでいたら変なこじらせを抱えることになったかもしれない。
それぞれの考え方が物語に仮託して語られる中、日南葵の異質さがますます目立つことになる。キャラクターのモチベーションや悩みを積極的に言語化することがテーマにある物語にあって、ひとりだけ何を考え求めているか明らかにされないこともあるのだろうか。