瘤久保慎司 『錆喰いビスコ 7 瞬火剣・猫の爪』 (電撃文庫)

錆喰いビスコ7 瞬火剣・猫の爪 (電撃文庫)

錆喰いビスコ7 瞬火剣・猫の爪 (電撃文庫)

「無茶な仕事じゃないですよ、僕にはもうシナリオが見えてる。『猫』にはなくて『人間』にだけあるもの、それを使うんです」

「ふむ、それは何だ?」

「学歴ですね」

黒革に代わってパウーが忌浜知事になって間もなく。忌浜の街では人間が「猫化」する奇病が流行していた。平和を持て余していたビスコは解決に乗り出すが、砂漠に突如出現した巨大な猫の顔に吸い込まれてしまう。

猫たちの国、猫摩国を舞台に、猫になったビスコとミロが例の如くの大暴れ。アニメ化も発表されたシリーズ最新作。講談調で語ってゆくのは異世界転生、時代劇、猫類補完計画、そして猫と猫の愛ともうなんでもあり。

ストーリーとしては番外編に近いのかな。瞬火(またたび)猫世音(にゃんぜおん)魔誕子(またんご)といったテキストのセンスだったり、日常のように男へ愛の告白をする男だったり、男同士(片方は既婚者)なのにはっきり「つがい」を自称するし。定番となった楽しさがある。社会がなければ生きられない人間と、自由の象徴である獣の猫を混ぜ合わせて対比させる手法も、定番でありつつ作者ならではの熱が感じられる描き方だったと思う。アニメ化がきっかけでさらに読まれるようになるといいなと思ってます。



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